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「な、なんだこれは……」
メロスは激怒した。
否、祐樹は驚愕した。
お目当てのフライドチキンチェーン店には、長蛇の列が出来ていた。外でこんな状況なんだから、中の様子は言わずもがな。
家族連れ、カップル、家族連れ、カップル、カップル、カップル、エトセトラ、エトセトラ……。
当然と言えば当然だが、独り身で並んでいる者は居ない。ここに並ぶのは、正直辛いものがある。
(致し方なし、か)
意を決して、祐樹は列の最後尾に並んだ。
「へっくしょん!」
独り身がこんなに寒いものだとは思っていなかった。自分一人でも何とかなると思っていた。夢と希望があれば生きていけると思っていた。
だが、現実はそんなに甘くはなかった。
祐樹の後ろにはぞくぞくと人が並んできている。無論、独り身の者は居ない。
「畜生……」
祐樹は何だか、この世の不幸を自分一人で全て背負っているような気がしてきた。
「ん?」
ふと、前に並んでいる家族連れの少女がこちらをチラチラと見ていることに気が付いた。
目を合わせると視線を外し、しばらくするとまた見てくる。
(見せ物じゃねぇぞ……)
子供のやることと割り切れるぐらいの余裕は、祐樹の心には無かった。
「ねぇねぇ。お母さん」
その少女は、自身の隣に居る女性の腕を引っ張った。
「なぁに?」
女性が反応するのを確認し、祐樹を指差して一言。
「あのお兄ちゃん。クリスマスなのにどうして一人なの?」
「……」
「馬鹿っ!!」
訊かれた女性は祐樹を一瞥し、少女を前に向かせた。
「クリスマスはね、みんながみんな誰かと一緒に過ごしてる訳じゃないの」
(……誰か自動小銃持ってないか?)
祐樹は死にたくなった。
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