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くそぅ……。
なぜ……なぜ俺だけこんな目に合わなきゃならん。
坂中の奴も田中の奴も、みんな家族や彼女と過ごしてるってのに。
だいたい、クリスマスってのはもっと神聖な日であるはずだろう?
キリストにお祈りに行ったり、賛美歌を歌ったりするのが本来あるべき姿じゃないのか?俺はキリスト教徒じゃないからよく分からないが……。
そんな日を男女が一緒に過ごすなんて不潔ですわっ!!
そもそも、日本は神道や仏教が主流の国じゃないのか?そんな国がクリスマスなんてやっていいのか?
誰だ。開国なんてしたのは。
「いらっしゃいませ!ご注文をどうぞ!」
店員に声を掛けられたことによって、祐樹の思考は停止する。
いつの間にか祐樹の順番が回ってきていた。
「えっと、持ち帰りで……」
「あっ、お客さま」
「はい?」
「予約の方はされていますか?」
「予約……?」
初耳だった。
「はい。クリスマスは混むので、持ち帰りは予約された方のみのご注文となります」
「そうなんですか……」
たかがチェーン店と馬鹿にしていたが、意外としっかりしているようだ。
祐樹は内心ちょっとびっくりした。
「で、予約の方は?」
「……していません」
「じゃあ、店内でお召し上がりして頂くことになりますけど……」
席はどこも空いてない。
いつ空くかも分からない。
「……すみません。やっぱ帰ります」
クスクス……
クスクス……
店内のいたる所から、笑い声が聞こえた気がした。
「そうですか。では、よいクリスマスを!」
嫌味にしか聞こえない台詞と爽やかスマイルを受け取り、祐樹は店を後にした。
「……寒っ」
やっぱり外は寒い。
祐樹は何だか泣きたくなった。
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