喧嘩

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ピーポー ピーポー    フゥァン フゥァン カン カン カン ………………これを、 これを地獄絵図と言うのだろうか… 何てことなの… そこにはあった… 苦しみ、泣き叫ぶ人達の声… その人達を救うために働く人達… ただ騒ぎたいだけの野次馬や、その光景を眺めているだけの傍観者… それらの人々を結び付けたのは、激しく燃え上がる炎だった… 人とはこんなにも無力なものなのかと私は実感した。 赤く、そして煌めく炎は、人々の欲望、憎しみが 折り重なって出来ているのではないかとも思った。 憎い… よくも洋輔を… ………ピリリリリ ………ピリリリリ ………ピリリリリ 何… 私の携帯… カチッ あっ 目元を真っ赤に腫らして 地面に座りこんでいる私に電話をかけてきたのは… かけてきたのは…… 洋輔だった。 私の体から力がふっと抜けた。 よかった…。 洋輔が無事でいて…… 「おぃ、美香。俺は家だけど今何処にいる?」 …………謝らなきゃ…… 洋輔に…… 「ごめん、洋輔。さっきは私が言い過ぎた……」 許してくれるだろうか… この私を… 素直になれないこの私を… 「…俺も悪かった、済まない…」 「美香がいなくて心配したんだぜ、早く帰ってこいよ。」 えっ……… 怒ってない……… しかも私を………… 私のことを心配してくれた? 「うれしい…」 「何か言ったか?」 「ううん、何でもない。」 急いで帰ろう。 洋輔に早く会いたいから… 私はこんなにも弱い人間になってしまったんだね… 貴方がいないと心が張り裂けそうになるんだから… 私と…… 私と一緒に生きてください…  
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