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女の子
「………ぅ…うんっ…」
おお…すげぇ…。
泣き止んだぞ…。
さすが、といったところか…。
雅樹
「でも…この中から探すのか?」
見渡せば人、人、人。
人しかいねぇ。
いやまぁ…海だから当たり前なんだが。
この中から、一人の人間を探すのはかなりの手間がかかる。
雅樹
「うぬ…」
どうするか……。
聞き込みとか…?
奈緒
「迷子センター…かな?
もうお母さん、
待ってるかもしれない」
雅樹
「あ……なるほど…」
その手があったか!
奈緒は俺が考えていることよりも、一歩二歩先を進んだ、俺には思いつかないような確実な答えを導き出してくれる。
だから俺はあの頃、奈緒のそんなところに憧れていたんだろうな…。
女の子
「………」
奈緒
「よしっ、行こうか」
奈緒の笑顔は、不安を一気に吹き飛ばす。
女の子
「うんっ」
女の子はと奈緒は、はぐれないようにお互いにしっかりと手を握り合う。
雅樹
「………」
……なんだが俺だけおいてけぼりじゃないか…。
だが俺がここでなにかをして、女の子を泣かせても、奈緒が困るだけだ。
雅樹
「うぬぅ……」
男として、なにもしないのもどうかと思うんだががなぁ…。
雅樹
「うっしゃあっ!」
女の子
「ひあっ!?」
俺は女の子の股の下に頭を入れて、そのまま立ち上がる。
肩車ってやつだ。
奈緒
「ま、雅樹!?」
雅樹
「これなら、
親が気づくかもしれないだろ?」
俺には、人を安心させるような笑顔は作れない。
だからといって、安心させられないわけではない。
雅樹
「高いところは恐いか?」
俺は俺のやり方で、女の子を笑顔にさせればいい。
女の子
「ううん。だいじょーぶ」
女の子は俺の髪の毛をしっかりとつかむ。
奈緒
「もう…」
奈緒は呆れてるが、すこし嬉しそうな複雑な顔。
雅樹
「名前はなんていうんだ?」
あみ
「あみ」
雅樹
「あみか。
あみは海好きか?」
名前さえわかれば、仲良くできる。
これは、数すくない俺の自慢の特技かもしれない。
あみ
「うんっ。
大きくて、広くて、冷たくてっ」
足をブンブン振りながら興奮気味にはしゃぐあみ。
奈緒
「海は楽しいよね」
あみ
「うんっ。
みんなでいっぱい遊んだ。
でも…明日には帰るんだって…」
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