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振り回していた足が、力を無くしぶらんっとぶら下がる。
雅樹
「んー…」
奈緒
「そっか…。
明日帰っちゃうんだ…」
これくらいの歳の子は、たくさん遊びたい年頃なんだろう。
飽きるまで遊ばせたら、何ヶ月もずぅーっと、遊んでいそうだもんなぁ…。
雅樹
「じゃあこんなところでぐずぐずしてねーで、
さっさと親捜して、
思い出いっぱいつくんねーとな」
あみ
「うんっ」
奈緒
「もう…言葉遣い汚いよ。
あみちゃんが真似したらどうするの?」
雅樹
「……すいません」
奈緒さん母親モード。
これは言葉使いは遺伝なんだ。
親父から受け取った、大切な形見なんだ。
……親父は生きているけど。
………
雅樹
「どーだ?
あみの母ちゃんいるか?」
無事、迷子センターまでたどり着く。
俺たちはキョロキョロと辺りを見回し、あみの母親を捜す。
と言っても、俺と奈緒はあみの母親を見たことがないため誰がそうなのか全然わからない。
あみ
「いない……」
俺の髪をギュッと握りしめ、かすかな声でつぶやいた。
雅樹
「そっかぁ…。いねーか……」
まいったな…。
奈緒
「大丈夫だよ!
ここにいれば、きっとお母さん迎えに来るよ」
あみの不安を吹き飛ばすよう、満面に微笑んでみせる。
あみ
「うん…」
雅樹
「………」
しかしあみの表情は変わらず、曇ったまま。
奈緒
「ちょっと待っててね。
係の人呼んでくる」
雅樹
「待てっ」
俺は走り出した奈緒の肩を掴み引き止める。
雅樹
「たしかに、ここに任せとけば大丈夫だろうけど…」
奈緒
「………」
それが普通の考え方なんだろうけど……。
雅樹
「今俺たちがここを離れたら、
あみは周りが知らない人だらけになるんだぞ?」
奈緒
「………」
雅樹
「それってすげー怖いことなんじゃねーか?」
ただでさえ親とはぐれて不安だらけなのに、俺たちがいなくなってしまっては、また独りになってしまう。
奈緒
「………うん」
雅樹
「だから…さ、
親が来るまで待ってみよーぜ」
奈緒
「そう…だよね」
雅樹
「おう。
それに俺たちにはもう一つ、
やらなきゃならないことがある」
そう、一番重要なこと。
奈緒
「やらなきゃならないこと?」
雅樹
「あみの親にガツンと言ってやらなければ!!」
こんなに小さな子から目を離し、1人にさせ、不安にさせたことを叱ってやらなければいけない。
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