8月1日(金)【奈緒】

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    俺に口出しする権利はないかもしれないが、少なくとも、まみを不安にさせたのは確かだ。 知らない土地で、広い海で、見ず知らずの人に囲まれて…きっと凄く怖かったにちがいない。 奈緒 「あはは。 そっかぁ…そうだよね。 私ってダメだなぁ……」   雅樹 「そんなことねぇよ。 奈緒がいなかったらここまで来れなかった」   迷子センターに行くなんて、俺には思いつかなかった。   奈緒 「うん…。だけどね? やっぱり雅樹にはかなわないなぁ……って」   雅樹 「は? なに言ってんだよ」   奈緒 「たしかに、 私は正しいかもしれない。 だけどそれはごく普通の一般論でしかない」   雅樹 「………」   奈緒 「だれにだってできること。 私には雅樹みたいに……」   俺、みたいに…。 あみ 「お姉ちゃん? お兄ちゃん?」   雅樹 「ん?」   奈緒 「なぁに?」   あみ 「仲良くしなきゃダメだよ!」 雅樹 「はい?」 奈緒 「え…?」 あみには、俺と奈緒がケンカしてるように見えてしまったらしい。 あみ 「めっ」 雅樹 「お…おうっ」 奈緒 「あはは、そうだよね」 あみ 「ほぉら握手握手っ」   そう言って、俺と奈緒の手をとり重ねる。   雅樹 「ちょ…」   奈緒 「っ…」 奈緒の柔らかい手が、俺の手を力強くしっかりと握りめる。 その瞬間、俺の心臓が一回大きく波をうった。   雅樹 「………」   俺はなにも言わずに、奈緒の手を奈緒よりももっと力強く握ってやる。   奈緒 「ま…雅樹…?」   いや違う。 …なにも言えなかったんだ。   奈緒の手の温かさだけが、俺の体に伝わってくる。   なんだか…すごく、すごく居心地がいいような気がする。   奈緒 「………」   隣にいる奈緒の顔をまともに見ることができない。   奈緒は今、どんな顔をしているんだろう…。   俺は…奈緒が…… あみ 「おーいっ!」   雅樹 「はっ!」 奈緒 「へっ?」   俺は今なにをしていた?   奈緒とつながっていることが、すげーうれしくて……   雅樹 「~~~っ!!」   思い出すと、今さら羞恥心が襲ってくる。   あみ 「……ふふ」   奈緒 「な、なにかな!?」   あみ 「お姉ちゃんとお兄ちゃん。 あみのぱぱとままみたい」   雅樹 「ぱっ!?」 奈緒 「まっ!?」   思わず声がうらがえる。   落ち着け俺! 子どもの冗談だ! 本気にするな!!   俺が奈緒のフィアンセなんて、ありえるわけないだろっ!!   雅樹 「…………っ」 そうだ…ありえるわけがない。    
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