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俺に口出しする権利はないかもしれないが、少なくとも、まみを不安にさせたのは確かだ。
知らない土地で、広い海で、見ず知らずの人に囲まれて…きっと凄く怖かったにちがいない。
奈緒
「あはは。
そっかぁ…そうだよね。
私ってダメだなぁ……」
雅樹
「そんなことねぇよ。
奈緒がいなかったらここまで来れなかった」
迷子センターに行くなんて、俺には思いつかなかった。
奈緒
「うん…。だけどね?
やっぱり雅樹にはかなわないなぁ……って」
雅樹
「は? なに言ってんだよ」
奈緒
「たしかに、
私は正しいかもしれない。
だけどそれはごく普通の一般論でしかない」
雅樹
「………」
奈緒
「だれにだってできること。
私には雅樹みたいに……」
俺、みたいに…。
あみ
「お姉ちゃん? お兄ちゃん?」
雅樹
「ん?」
奈緒
「なぁに?」
あみ
「仲良くしなきゃダメだよ!」
雅樹
「はい?」
奈緒
「え…?」
あみには、俺と奈緒がケンカしてるように見えてしまったらしい。
あみ
「めっ」
雅樹
「お…おうっ」
奈緒
「あはは、そうだよね」
あみ
「ほぉら握手握手っ」
そう言って、俺と奈緒の手をとり重ねる。
雅樹
「ちょ…」
奈緒
「っ…」
奈緒の柔らかい手が、俺の手を力強くしっかりと握りめる。
その瞬間、俺の心臓が一回大きく波をうった。
雅樹
「………」
俺はなにも言わずに、奈緒の手を奈緒よりももっと力強く握ってやる。
奈緒
「ま…雅樹…?」
いや違う。
…なにも言えなかったんだ。
奈緒の手の温かさだけが、俺の体に伝わってくる。
なんだか…すごく、すごく居心地がいいような気がする。
奈緒
「………」
隣にいる奈緒の顔をまともに見ることができない。
奈緒は今、どんな顔をしているんだろう…。
俺は…奈緒が……
あみ
「おーいっ!」
雅樹
「はっ!」
奈緒
「へっ?」
俺は今なにをしていた?
奈緒とつながっていることが、すげーうれしくて……
雅樹
「~~~っ!!」
思い出すと、今さら羞恥心が襲ってくる。
あみ
「……ふふ」
奈緒
「な、なにかな!?」
あみ
「お姉ちゃんとお兄ちゃん。
あみのぱぱとままみたい」
雅樹
「ぱっ!?」
奈緒
「まっ!?」
思わず声がうらがえる。
落ち着け俺!
子どもの冗談だ!
本気にするな!!
俺が奈緒のフィアンセなんて、ありえるわけないだろっ!!
雅樹
「…………っ」
そうだ…ありえるわけがない。
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