第一章

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寒さを感じる真冬の午前、冷たい風が足元を走り抜け、日の光がぬくもりと感じる季節……… 「ここかなぁ?」 1人の女子高生らしき人物が建物を見つめる。 ここは街から遠く外れた、廃墟と化した空き家が並ぶ地区。 その一角に建っている古ぼけたビルの前にいた。 女子高生の背丈は160程度、いやもう少し小さく見えるかも知れない、制服の上から黒いコートを着て、チェック柄のマフラー、紺色の手袋をつけていた。 女子高生はサラサラとした黒髪を肩まで垂らし、冷たい風になびかせている。 おっとりとした顔で人懐っこさがあり、並みより少し可愛らしい顔付きにも見える。 幾分か経ったか、女子高生は何をするのでもなくただ遠い目でビルを睨むように眺めていた。 風が吹き抜ける音のみ聞こえる静かな沈黙の中、女性は真剣な眼差しで建物を見ている。 そして、女子高生に近づく影が一つ……… 影は足音を立てずにゆっくりと近づき女子高生の背後まで寄っていく。 そして――― 「どうしましたか?」 油断し無防備な女子高生に手を差し伸ばし、肩に手を置くと同時に声をかけられた。 「きゃぁ!!」 女子高生は肩をビクッと振るわせてすぐさま振り返えると見知らぬ男性がこちらを向いていた事に戸惑い、驚きを隠せないまま後ずさりをする。 少しして、落ち着いたのか、女子高生は男性をまじまじと見た。 足元から順に上の方へと視線を移していく。 スラッと伸びている身長、180はあるだろう。着こなしたスーツの上からダッフルコートを被せている。 前髪は両目にかかる程度、後ろ髪はうなじが隠れるほどだ。 整った顔に鋭い目つきをした顔は、誰が見ても惚れ惚れするに違いない。 「あの~~、此処って……斎藤探偵事務所ですか?」 なにもされない事を確認すると、安心したのか、女性は少し間を置いてから目の前にいる男性に声をかけた 「そうだよ、けど今はまだ開いて無いみたいだね」 「そうですか……」 「依頼かい?」 「いえ! 違うんです……ただ……」 「ただ……?」 男性が不思議そうに聞くと。 「いえ、なんでも無いです、さようなら」 女性はぺこりと頭を下げると、険しい顔をして駆け足でその場から逃げだしてしまった。 「なんでもない、か……ああいう顔は何かある時の顔なんだけどねぇ」 走り去っていく女子高生を遠い目で見送った後、男性はビルの中に入って行く。
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