第一章

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コツコツとリズミカルに音を奏でながら、男性はコンクリートの階段を上っていき、そのまま二階まで来ると古ぼけてサビついたドアを開けて、男性は部屋の中に入った。 部屋に入ると目の前には向かい合った黒いソファー、その間にある金属製のテーブルが目に入る。 それらの奥にブラウン管のテレビ、反対側は大きめの木製デスクが窓際に設置されていた。 ほかにも本棚や冷蔵庫、コーヒーメーカーなど日常品が点々と置いてある。 男性は木製デスクに歩いていき、入り口付近に落ちていた雑誌のページを捲りながら―― 「さて今日の運勢は……… 最下位か、しかも仕事運が最悪……」 とぼやいた。 男性は椅子に深く座り込み、占い雑誌に愚痴をこぼしつつ、顔をしかめていた。 「さっきの女子高生、あれは………」 男性は重い眼差しになりながら、先ほどの女子高生の事を思い返していた。 (う~ん、女子高生がこんな辺鄙な所まで何の用かな? 最近の若者は悩み事が多いとは聞くが事務所を訪ねるまでとはいかないだろう。 まさか恋愛相談をするためにここに? いやいや、それは無い………) 「こういうのはアイツに任せた方が……」 ダダダダダダ 静かな空間に、だんだんと大きくなる音が聞こえてきた。 自分が登ってきた時とは違い、落ち着きの無さが音に現れるように響き渡たる。 「おはよーございます、先生!」 「ああ、おはよう」 サビれたドアが壊れてしまうのではないのか、と思う程大きな音がなると、入り口の前で一人のジャージ姿の青年が元気よく挨拶をした。 青年は男性と同じ位の背丈。 だが男性より少し筋肉質のようにも見える。 青年は冬場にも関わらず、ジャージの前を開け、中に着ていたTシャツをだらしなくなびかせていた。 焦げ茶の短髪をツンツンに立たせ、首から肩にかけてスポーツバックをかけている。 服装や髪型からしても若さを感じるが、だらしなさも感じる事ができる。 青年は部屋に入り、片隅に置いてあるメーカーの方へ歩いて行った。 「いや~相変わらず先生は早いですね」 青年はニコニコしながらコーヒーメーカーの隣に置いてあるポットからお湯を注いだ。 「先生はブラックで?」 青年は、コーヒーを入れながら男性に話しかける。 「ああ、そうだよ。 覚えてくれたんだね」 「もう流石に間違えませんよ」 そう言うとカップを机に置いた。
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