第一章

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「甘いよ、安藤クン」 男性は右手のグーを少し上げながら勝ち誇った顔で安藤をみくだしていた。 「うう~~ 1983戦1983敗かぁ」 安藤は右手のチョキで床を叩きながら倒れるように落ち込んだ。 安藤は冷蔵庫の隣の壁に張ってある『昼飯買い出し勝負』と書かれた大きな方眼用紙に『正』の字の三画目を書き込んだ。 「仕方ないなぁ、今日は私が買いに行きましょう」 男性が大きなダッフルコートを持ちながら言った。 「さすがは先生、心が"広い"!!」 安藤は小さく拍手をしながら心のこもったお礼を言ってはいるが、顔にしてやったりと書いてあるように見えて、少しいらつく。 「財布の懐の肩身は"狭い"がね」 男性がそう言いながら、部屋のドアに手を掛けようとすると―― ギィーー 「あの~~お邪魔します、此処って… ―――あっ! 朝に会った!」 男性が朝に出会った、女子高生が驚いた顔で中に入ってきた。
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