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見上げれば、柔らかそうな粉雪が降り注ぐ。
X'masイヴ。恋人、家族のためのイベント。
吐き出した溜息は白く色づいて、同じ色の空に、静かに消えた。
(寒……)
マフラーはしていても、服の肩口はしっかり開いている。
城下町の賑わいの中、一人でいるからかもしれない。
町は、赤と、緑と、白で彩られて、幸せを帯びている。
……X'masって、本来何の日だったっけか。
確かキリストがどうとかだった気がする。
いつの間にか、髭の赤ダルマにプレゼントをもらう日になってるけど。
畜生、幸せそうに笑いやがって。
城下町を早足に抜けて、向かうはチェシャ猫の森。
しばらくぶりだが、迷わず行けるのは一本道だからなのか、それとも身体が覚えているからなのか。
森に入ると、うっすらと積もった雪のせいで別世界に見えた。
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