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自然に足早になる。
香るのは、紅茶。
きっとこれは、誰かさんブレンド。
黒いドレス、翼、黒髪。
白い耳、鈴。
ピンク、枕、椅子、シルクハット。
ちょうど焼き上がったケーキを運びながら、シルクハットは笑った。
2年前と何も変わってない。
「遅いぞ、のろま」
黒いドレスの女王は、口悪く、でも笑いながら言う。
「相変わらずだな、時間がわからないのは」
「三月ウサギにでもなったのか?」
翼と黒髪、lifeとdieは手を繋いだまま、悪戯に笑って悪態をつく。
少し、大人びたな、双子。
「寒くなったね」
白い耳、トザウサギは、俺の頭に乗った雪を払った。
「ここは寒くないにゃ。……帽子屋のお陰で」
背が伸び、髪が伸びたチェシャ猫カイトは、少しぼろっちくなった鈴をちりん、と鳴らした。
「んだよ双子め、今日は時間守っただろ~?」
奇抜なのは相変わらずの三月ウサギは肘をついた。ピンクが目に痛い。
「紅茶、美味しいよ……」
抱えた枕を離さないネムリネズミは随分と大きくなった。
……パジャマは相変わらずだがな。
「やあ、久しぶり。大きくなったね」
紅茶にミルクを注いで、優雅に啜る天空は自分の椅子に座り、地面からふわふわと浮いている。
「紅茶、煎れたてだよ。ケーキもクッキーも焼けたしね。」
シルクハットの帽子屋は、俺を椅子に座らせる。
成長したのは、俺が願ったからなのかな。
「やっと揃った」
「じゃあ、始めようぜ」
あの日のお茶会が重なる。
懐かしい。
暖かいそのパーティーは、俺が座って始まった。
「……MerryChristmas、アリス」
俺にそう呟いたのは、果たして誰だったんだろうな。
「……メリクリ。」
……紅茶から香る、きれいな香りが白い湯気に混じって、同じ色の空に静かに消えていった。
X'masって、何の日だったんだろう。
そんな疑問は、今だけ忘れておくことにする。
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