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――2007年12月東京…
街中は赤や緑の装飾やピカピカのネオン、赤いサンタルックの看板娘たちが店の前でせわしく立ち回っている。
毎年、この時期は少女――聖 魅沙(ヒジリ ミサ)にとっては憂鬱そのものだった。
魅沙は、『赤』が嫌いだ。
去年のクリスマスイブの夜に、たった一人の肉親であり血を分けた二卵性の双子・讚汰(サンタ)を失った。
―――轢き逃げだった。
待ち合わせ場所に着いた魅沙を待ち受けていたもの……
発見された時には、もう彼は冷たい塊と化していた。
――赤い、赤い血が
白い白い雪の絨毯を赤く染めて……
――とある孤児施設
「ミサちゃん、今日ミサちゃん宛てに手紙が届いていたわよ」
施設育ちの魅沙にとって、もはや母親と言っても過言ではない存在の眞利亜(マリア)が魅沙の机に真っ赤な封筒を置いた。
「―――気持ち悪い…」
魅沙は嫌悪感をあらわに、その封筒をゴミ箱へ放り込んだ。
「……まだ、『赤』が苦手?」
そんな魅沙の様子を見ていた眞利亜は心配そうに魅沙の顔を覗き込んだ。
「――もう一生変わらないと思う……」
部屋の窓から見える、冬の夜空にちらりと目線を移しながら……魅沙は最悪なあの日をまた思い出し、短い溜め息をついた。
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