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第1章 -別れ-
闇夜にちらつく雪がロマンティックな雰囲気を作り出している。
遠くから聞こえるクリスマスソングは私のテンションを心なしか盛り上げてくれる。
街から少し離れた公園に設置されたツリーを見上げ、左手をぎゅっと握り締めると、突然その束縛が緩くなった。
どうしたのかと思い、左にいる私の大切な人、如月陸(キサラギリク)を見つめた。
「ごめん。別れよう」
突然切り出された別れの言葉。
耳を疑うとかじゃなくて…言葉が出なかった。
「…本当にごめん」
整った顔立ち、筋の通った高い鼻、ほんの少しだけ怖くも感じる瞳。
夜風になびく整えられた髪の隙間から街灯に照らされて輝く水滴が見えた…
「えっ…?」
その時初めて声を出すことができた。
別れを切り出されたはずが、確かに見えた涙。
「ごめん…!」
それだけ言うと陸は、私を一人残し走り去って行ってしまった。
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