第1章 -別れ-

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私、市川舞(イチカワマイ)はクリスマスが大嫌いだ。 あの日以来クリスマスになると思い出が鮮明に浮かび上がって来ては無邪気に心をいじってくる。 世間は幸せでも、私は幸せなんかじゃない。 …でも、そんな私もやっと幸せを掴めそうなんだ。 「おーい!舞っ!今から大丈夫か?」 「あ、はーい!今行く!」 遠くから聞こえてきた愛しの声。私を幸せにしてくれる大切な人、藤原裕也(フジワラヒロヤ)の声に反応して、財布を鞄に放り込んだ。 少し厚化粧だったかな…とか考えながらも、笑顔で私を迎えてくれる裕也を見るとそんな心配は杞憂に終わるんだけどね。 「おはよ!」 「おはよー!」 いつも通りに挨拶する。 けれど、今日は特別な日。 私と裕也の結婚式を控えた私達は式場に見学に行くことになってるんだ。 高ぶる気持ちを押さえながら、車に乗り込み、オーディオから流れる音楽に耳を傾けた。
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