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俺は、宇宙の神秘を解き明かした。
ノーベル賞なんて目じゃない。水戸黄門の紋所を見せ付けられた悪代官よろしく、全知全能たる神が俺の前にひれ伏す日も近い。
さっそく、この発見を論文にして発表しなくては。
「お兄ちゃん、起きて。朝だよ」
ん? なんだ? 揺れているぞ! 宇宙が、俺を淘汰しようとしているのか! ならば、俺は、お前を越えてみせる! 食らうがいい! 必殺の、
「モンゴリアン・チョップ!」
「痛っ」
宇宙は可愛らしい声をあげ、去っていっ……
ちょっと待て。おかしいぞ。何か、おかしい。
「宇宙って、そんな萌えワールドだったのか!!」
「きゃっ」
待てまてまて、冷静になるんだ。落ち着け。落ち着け、紳士オブ紳士。
いいか、ここは俺の部屋だ。そして、俺はベッドに寝ている。ついさっき、神を超越する理論を発見した気がするが、今はそれどころではない。
今日は、12月9日、月曜日。学校は平常授業だから、7時に起きた俺は、遅刻二桁を阻止できる。
つまり、ゆっくり着替えて、パンと温かいコーヒーを頂き、悠々と我が家を後にするという、なんとも素晴らしい1日がゲット、つまり手に入るわけだ! 間違いない! グレイト!
では、さっそく着替えようか。 俺はサクっとパジャマを脱ぎ、トランクス一丁になると、
「やあ、おはよう。君は一体誰かな」
世の女が一瞬で惚れてしまうだろう笑顔、さすが俺。
「ええっ!? このタイミング!?」
とか、そういうツッコミを期待していたのだが、顔を赤くしてあたふたすると、
「ご飯できてるから、降りてきてね」
と言うと、出ていってしまった。残念。
さてと、制服に手を通して、温もりに包まれなくては。
えっと、制服、制服は……ちょっと待て。一つ聞いていいか?
さっきの誰だ?
まさか、死んだ婆さんが俺への恋心を捨て切れずに、幽霊として生き返ったとでもいうのか。
いや、ないな。婆さん生きてるし。車にひかれそうになったときに、逆に車をひいたとか色々伝説持ってるしな。まあ、ボケた爺さんの話だから、ホントかどうか知らんけど。
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