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で、だ。誰なんだ? いや、俺は知らんぞ。
実は普通に俺の妹で、最近人生に飽きてきたから、突然現れたように装って、
「これ、なんてエロゲ?」
とか驚いてみるという、回りくどい自作自演じゃないから安心してくれ。
なるほど妹か。ありうる。あのエロオヤジのことだ、隠し子の一人や二人いたって俺は驚かないぞ!
そんなことでは動揺しない俺はさっさと冬服に腕を通し、神風の如くリビングへと駆け降りた。
「ふっ、決まった。ニヤリ」
思わず擬態語を自分で言ってしまうほど決まったぜ。ほら、妹も俺のかっこよさに驚いてるじゃないか。
下の方がスースーしているが、気のせいだろう。それより飯だ、めし。
「さあ、ご飯にしよう」
薔薇がバックに咲いたような微笑を妹に向ける。
「う、うん」
妹は顔を朱に染めながら、席についた。そんなに俺は色男だったのか。心配になってきたぞ。このままだと世界の人口の半分が俺に惚れ、あと半分、つまり男共に袋叩きにされるかもしれないな。
そんなことを考えている内に、半分以上おかずを食べ終えた。
「あ、あの……おいしい?」
妹が潤んだ瞳で上目遣いに聞いてきた。
「んー、正直まあまあ」
なんて、言えるわけないだろ!
だから大袈裟に、
「君を愛してる」
とか、意味不明な飛躍をしたクサイ台詞を言うほど俺はアホではない。
俺みたいな天才は、嘘にちょっぴり真実をまぜるのさ。
「なんて美味しいんだ! こんな美味しい料理は昨日食べたカップ麺を含めて三回くらいしか食べたことがない! あまりの美味しさにズボンを履き忘れたくらいだ!」
ダッシュでズボンを履き、軽やかに舞い戻る。あまりの速さに、妹は気付かなかったようで、こんなことを言ってきた。
「お兄ちゃん、ズ、ズボン」
生まれて初めてお兄ちゃんと言われたが、大したことないな。 まあいい、安心してくれ妹よ。「ちゃんとズボンは履いてるぜ!」
「……」
「パジャマのだけどな!」
二度も部屋に戻らなければならないとは、妹もあなどれぬ。
……これからは制服で寝ることにしよう。
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