プロローグ―起床―

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  美味しいご飯を召し上がった、とか自分に敬語を使うほど時間に余裕があるな。妹は二階にいってしまったし、テレビでも見るか。スイッチオン! 「ポチ」  お前は犬か! よし、寒い一人ツッコミで食後のクールダウン終了。  なんだ、まだ8時10分か。  いつもは8時くらいに家を出て全速力で走れば間に合うから、その二倍の速度で走るだけであら不思議! 10000M世界記録の誕生だ!  とか、言ってる場合ではないな。  どうやら、食事に時間をかけ過ぎたようだ。  大丈夫、昔の偉人はこんな名言を残しているではないか。 『急がば、まわれ』  テーブルの周りを三回ほどまわった辺りで妹がトコトコ降りてきた。 「遅れてごめんなさい」  そんなに申し訳ないって顔をしないでくれよ。まだ遅刻と決まった訳じゃないさ。  そう、俺には秘密兵器があるのだ。  俺はそれをフェラーリと呼び、人はそれを自転車と呼んだ。  妹の制服姿を拝むのもそこそこに、俺はフェラーリにまたがると後ろの荷台に妹を乗せたところで気付いてしまった。  パンクしてる。  なんてこったい。人生オワタ。「お兄ちゃん、私のせいで遅刻させてごめんなさい。私、頑張るから走ろう」  すまないな妹よ、腑甲斐ない兄を許してくれ。  俺は妹の手を取ると走りだした。  逆方向だった。  ありえない1日が幕を開けた。
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