第一章―登校―

3/3
前へ
/11ページ
次へ
 一時間目が始まるころ、裏通りに入ったところで学校が見えてきた。  次の交差点を渡れば正門だ。  いつも思うのだが、よくマンガやアニメの主人公がパンをくわえた少女と交差点でぶつかるが、あんなこと普通な  ドカ!  俺のパーフェクトボディに衝撃がはしる。これは不覚を取った。 「お兄ちゃん、大丈夫!?」  すまない、妹よ。俺はもうダメみたいだ、君だけでも先に行ってくれ。  と俺が言おうとしたその時。 「あ! わたしのパンが!」  目の前で情けない声。妹ではないな。  会って数時間で妹の声を聞き分けられるようになった自分に驚きつつ顔をあげ 「いたー!」  少女は俺の大声に、ビクッ、として拾ったばかりのパンを口から落とした。  しかし俺がナイスセーブ。 「大声を出してすまない」  そう言ってパンを渡す。 「あ、ありがとうございます」  少女は躊躇いがちに受け取った。  さて妹よ。先へ進むとしようか。 「あ、あの……」  後ろからさっきの声が。 「なんだいキャサリン。落ちたパンならいらないよ」 「ごめんなさい。パンはあげられないのです。大切なモノなのです」  ギャグだったんだが素で返された。俺、涙目。 「それでですね。ちょっとお聞きしたいのですが、ここの近くに高校はありませんか」  目の前を指さす。 「あ、ありがとうございました!」  パン少女は聞いた途端に走りだした。  素晴らしい走りだ。  まあ逆方向だが。  どうやら俺とは気が合いそうだ。 「おい、逆だぞ」 「えぇっ!?」  ズテ。  ナイスなヘッドスラディング。  ますます気に入った。 「俺たちも、ちょうど学校に行くところだ。一緒に行こうか。いや、むしろ来い」 「あっ、はい。ありがとうございます!」  ということで、パン少女(仮)が仲間になった。  もはや、ツっこむまい。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加