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連休前の金曜日、午後3時半を過ぎた中学校の教室。
ヘンな物語はここから始まる…。
「ちょっと!橘、今週はアンタ掃除当番でしょ~!」
「ゴメ~ン、オレ今日はサボり」
黒い学生服に学生鞄。(急げ!)
小柄な身体が勢いよく教室のドアを開けると一目散に廊下へと飛び出し駆けて行く。
「橘ぁ、アンタ掃除サボる気!許さないからね!」
開きっぱなしの教室のドアからホウキを持ったセーラー服姿が飛び出し、後に続く。
(うゎヤバ、急げ!)
「廊下は走らない」
と書いた張り紙の脇をほぼ全力疾走で走り、勢いを止めずに直角に曲がり、そのまま一段飛ばしで踊るように階段を駆け降りる小柄な学生服姿。
名前は橘北斗。
剣と魔法の世界が大好きな中学2年生だ。
今日は週末の金曜日。
待ちに待っていた、ある大作RPGゲームの続編の発売日である。
予約はとうにしてあるが、早く帰らないと、それだけゲームをする時間が減ってしまう。
もうすでに掃除当番でないクラスの早川や小滝や宮崎は家路についているのだ。
北斗がゲームを買う頃には確実に家に着いてゲームを始めている…。
時間の猶予は無い!
(急げ!)
北斗は下駄箱に上履きを放り込み、ボロいスニーカーを投げる。
足をつっかけ、もの凄い勢いで走り出す。
「橘ぁ~、待ちなさい!」
(あちゃあ!都築のヤツまだ追ってくるのか)
北斗が下駄箱口を出た直後にまだセーラー服が追って来る。
しかも、手にホウキを持ったままだ。
都築美海。
小学校の頃から何回も同じクラスだった事のある同じ班の女子で、クラスでは面倒見の良いお姉さん的な存在。6年の修学旅行とか、卒業式にも告白されてたから女子からだけでなく男子からも人気のようだ。
しかし、3階から校門まで追いかけてくるとは意外と執念深い性格なのか?
「橘ぁ~!待ちなさいっ!」
(うゎ!都築のヤツ凄い顔だ!)
容姿はクラスの中でも可愛らしい方の都築美海だったが、必死に走る形相はさながら鬼である。
「待ちなさーい!」
(うゎ!うそぉ!?都築のヤツ、まだついてくるのぉ?)
北斗が全力で校門を通り抜けた時に振り向くと、都築美海はまだ離される事も無くマラソンランナーよろしく後ろについていた…。
「うゎ!アイツ、メチャクチャだぁ~っ!」
北斗は半ば恐怖を覚え、全力ダッシュでゲーム屋まで走った。
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