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『人になると言う事は  簡単なことじゃないんだよ?』   これは…?   『人と雪は全然違うのだから……。』   うん、知ってるよ? 待って、 もう言わないで…その先は……    『もし、君が人になるとしよう。  君には想っている人が  いるんだね?  でもね、もし人になったとしても  幸せばかりではない。  相手には既に他に想う人が  いるかもしれないし、  もし、君の想いが届いたとしても  君は歳をとらない。  意味が分かるかい?  つまり。相手の人が  70歳になっても  君はその時のままだ。  永遠に、ね。  彼の違う、  新しく出会った誰かと  恋に落ちても同じ。  それほど重いことなんだよ。    だからまず、  君に一週間という時間をあげよう。  一週間経ってもまだ、  君が人になりたいと願うのならば  永遠に人の身体を授けよう。  けれど、気が変わって  やはり雪に戻りたくなれば  戻っておいで。  みんな笑顔で君を迎えるよ。    …もし、君が人になる事を  選んだのならば  二度と雪には戻れない。  永遠に同じ年齢のまま、  世界の終わりまでずっと…ね。  反対に、雪に戻る事を  選んだのならば  二度と人にはなれない。  さあ、一週間の時間を与えよう。  よく考えるんだよ?』   そうだ…。 このまま一緒にいても… 彼が歳をとっても私は今のままで… 彼の最期を見て、 世界の終わりも…   いやだ。   そんなの嫌だよ。   好きな人がいなくなる瞬間を 見続けなくてはいけない。 嫌だ…    だって、それってこれから 何百年、何千年と 生きるって事でしょう? この地球っていう星が 消えてなくなるまで…。 その間に何人の事を想う? ずっと大悟君だけを想える? わからない… たとえ、大悟君だけを 思えたとして… 何百年、何千年と… 彼を失った悲しみを 抱えなくてはいけないの?     目を覚ますと枕が涙でぬれていた。 決まったはずの答え。 それがグラグラと音を立てて 崩れていく瞬間だった…。
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