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大悟君は何も言わずに 私に歩み寄る。 そして優しく… だけど何処か力強く 抱きしめてくれた。 そして身体を震わせながら言う。   「もし、もし俺が…  行くなって…  ずっと一緒にって言えば…  いてくれるのか?」   返事が出来なかった。 ねえ、迷わせないでよ。 私は……どうしてこんなことを 願ってしまったんだろう。 ずっと、ずっと雪のまま 我慢していれば こんな事にはならなかった。 少なくとも、今この瞬間。 彼をここまで 震わせることはなかったのだ。   「俺、雪が好きなんだ。  それは…昨日知ってくれたよな?  …雪もなのかな?」 私は小さくうなづく。 この一年間ずっと伝えたかった想い。   「雪、ドレス…  それ雪の事想って  作ったようなもんなんだな…」 「大悟君…信じてくれるの?」 「…ドレスが似合いすぎる理由、  あの服が似合う理由…  それ以上の  説明なんていらないよ…」 「ぅ…う…ごめんね?  私、私が…こんなこと  願わなかったら…」   大悟君は何も言わなかった。 そう、何も願わなければ 誰も悲しまなかった。 こんな…こんな結末…     「雪、行くな。  行ったら絶交だ!  雪が降ったところに  即効お湯をかけにいく」 そう言って無邪気に 笑いながら涙をぬぐう。 私はやっぱり返事が出来なくて、 彼の目を見ることしか出来なかった。 そしていつものように 優しい手で頭を撫でてくれる。 …緊張してるの? 照れてるの? それとも… 何かをごまかそうとしているの?    
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