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ドレスから、 あの日彼にもらった服に着替える。 白いニット帽子に、 白いポンチョ。 黒いワンピースの裾が赤のチェック。 そして黒のオーバーニーソックス。 会場の横にある 公園の噴水のところで 私は夜空を見上げる。 吐息が白くなるのが面白い。   最後の挨拶はさっき済ませたもん。 これ以上一緒にいても 名残惜しくなるだけ…。 本当は一緒にいたかった。 私の勝手で現れたり、 消えたりしてごめんなさい。     「私に人の身体をくれた雪の神様…  聞こえますか?  一週間、とてもステキな  時間になりました。  今までで一番輝いていて、  一生忘れられない思い出。  本当はね、一緒にいたい。  けど…仕方がないの。    あの時あの条件を  いやだ!って言って  人にならなければとも思った。  けど、あそこで  わたしが人にならなかったら  こんなステキな想いを  知る事も出来なかったんですね。     神様、そして大悟君…  ありがとう。    神様?この身体は  空にお返しします。」   ―本当に、いいのかな?―   「はい。お返しします」   ―君が決めたのならば…―     私は思いっきり空へと手を伸ばす。 心一杯のありがとうを込めて。
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