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「ゆ…き!!!!!!」 名前を呼ばれて振り返る。 …彼だ。   「来ないで。  私はもう、帰るから。  そういえば…  あの日に約束してたのよ。  一週間だけねって、  帰れよって」 「雪、頼むよ、ずっと…ずっと…」   私はゆっくりと 大悟君に歩み寄った。 そして溢れそうな 涙をこらえて言うんだ。   「好きです。貴方が。  この一週間、  貴方とお話ができて、  貴方に触れることが出来て…  嬉しかった。  私はまた、会いに来ます。  もう人では ないけれど、  この季節。  毎年この季節になったら  貴方に会いに来ます。  貴方は前に進んで?  でも、この季節だけは  こんな事もあったって  思い出してください。  服も、ドレスも思い出も…  ありがとう。」   大悟君が拳を握るのがわかった。 そして顔を上げて笑ってくれた。   「絶対、会いに来いよ」 「うん。会いに来る」 「来年はここで大賞とったって  言うからな!」 「うん、絶対取ってね。」   大悟君の手が私の頭を撫でる。 最後の…心地いい瞬間。    「大悟君、最後のお願い…  ギュってしてください」   何も言わず ギュっと抱きしめてくれた。 大悟君の想いが ひしひしと伝わってくる。 俺はまだ、 納得していないぞ。って。 だから力強く、ギューって してくれているんだよね。 離さないぞって…   この冬。 私はとても素敵なことを たくさん知った。 恋や、笑うことの楽しさ。 そして、貴方。   絶対会いに来るよ… 来年も、再来年も、 ずっとずっと… この一年、 願い続けていた事が叶ったんだ。 今度は願うよ。 貴方が幸せになれるようにって。 貴方がコンテストで 大賞を取れますようにって… たくさん、たくさん お祈りするからね?     ありがとう。 本当に…大好きだよ。
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