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気づけば彼女は腕の中から いなくなっていた。 彼女がかぶっていた 白いニット帽子だけを残して… 熱いものが頬を伝う。 そしてそれを 冷ますかのようにして 雪が降り始めた。 俺は空を見上げる。   「あー…くそー!  雪の馬鹿野郎。  どいつが雪か…わかんねーよ!」   彼女が本当に 存在していたのかさえわからない。 今思えば、俺は 心を病ましていたのかもしれない。 けれど、今も写真に残っている。 俺がデザインしたドレスを着て 嬉しそうに笑ってくれている雪の姿。    
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