舞い降りた少女

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「よっしゃ、雪。  途中まで送ってやるよー。  また来いよ?」 大悟君の言葉で我に返る。 「へ?何処に?」 「ん、雪ん家だろ」 「あー…えっと…」 家?!家もあるの!? ってかあるなら何処に?! わっかんないよぉ! 「おい…待て」 オロオロしていると、 大悟君は私の手を掴んで 珍しいものを見るかのようにして じーっと見てくる。 そしてゆっくりと口を開けた。   「…家出少女?」 「え?」 「マジか!雪は家出少女なのかー!」 「な!?ち、違うぅ~!!」 大悟君は私の頭を くしゃくしゃと撫でる。 その大きな手が心地いい。 「だからあの格好かー。  ん、そしたら家に帰りにくいんか。」 私は小さくうなづいた後、 顎に手を当てて、 何かを考えている大悟君に 思いがけない事を口にしていた。   「わ、私を…一週間でいいので…!  ここにおいて  もらえませんでしょうか…?」   大悟君はキョトンとした顔で こっちを見ている。 私自身、何を言ってるのかと驚いた。 「あ…ぇと…  俺ら…  今日知り合ったばかり…だろ?  嫌じゃ…ねーの?」 私は首を左右に激しく振る。 後々になって恥ずかしさが こみ上げてきた。 「や…えと…ん。  ああ、俺は…いいけど…うーん…」   大悟君はしばらく黙った後、 私に手を差し出す。 「わかった。  本当は家へ帰れって  言うべきだけど。  俺にもそんな時期あったしな!  でも約束だ。  一週間だぞ?  ちゃんと帰るな?」 「ぁ…はい!」 もう一度、私の頭を くしゃくしゃと撫でる。 私は照れ笑いをして、 頭を撫でられる心地よさに 浸っていた。       それから大悟君は 私の部屋を作ってくれた。 最初は大悟君が使っている部屋を 使うように言われたのだが、 さすがにそれは悪い…。 他の部屋は散らかっていると 言われたのだが、 私は先程、 服を着替えに入った部屋を提案してみる。 さすがにリビングを借りて 寝るわけにはいかない。 朝や夜中、 気を使わせるのはいやだった。 少しためらいを見せたようだけれど 許可を得た。   「んー、ベッドはそこにある  ソファーを倒せば作れるよ。」 「ソファーを倒す」 「こんな狭い部屋に  無理矢理持ち込んだけど…大丈夫?」 「うん、むしろ  リビングになくていいの?」 「あ、それは大丈夫。」 そんな些細な会話が嬉しい。 笑ったり、からかい合ったり…。  
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