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風魔狩りが始まった。 小判を一枚ずつ全員に配り、それを手付けにした。 なんせ六十六人も集まったので、獲物にありつけない者がでると思ったからである。 京都守護職の松平中将、近藤勇と土方歳三にそれぞれ六人ずつ影の護衛をつけた。 この三人以外が標的なら、どうぞやっておくんなさいだね。 サンカ衆の弓は、元冦の時に蒙古軍が持ち込んだ平弓を改良した物だ。 二十間離れた人間を貫通してしまう威力がある。 しかし、威力があり過ぎるのも善し悪しで、貫通したり外した矢が壁や木などに深く刺さるため、回収するのに難儀する。 昼日中に忍がヤットコ持って、汗をかいて回収してるのは、はなはだ格好悪い。 しかし、毒矢を放置してはおけないので困ったもんだ。 この弓を、特に目の効く者五人に持たせ、会津藩邸に三人、屯所に二人配置した。 残りの四十三人は闇に溶け込み、俺にもどこにいるのか分からないほどだ。 初手柄はなんと、吉村貫一朗だった。 部屋の外に気配を感じ、壁ごと突き通したらしい。 気絶しているが急所を外れているので、拷問にかけるべく引っ立てた。 刺されたのが俺の手の者でなくよかったが、冷や汗ものだった。 吉村貫一朗、恐るべき腕だよ。 夜が明けて、会津藩邸から首が二つ届いたが、早朝から生首にはうんざりして、風魔忍は肩に梵字の刺青があるので、それを剥いで首の証しにするよう通達した。 沖田総司が起きてきて、吉村貫一朗の武勇伝を聴くと、子供のように悔しがった。 「いいなあ、かっこいいよなあ。壁ごとぶすりだもんなあ」 テッカリとイラナが腹を抱えて笑ってた。 サンカ衆の拷問担当が、捕らえた者を一寸刻みに刻んだところ、京に潜入した風魔忍は十六人であるのが判明した。 残り十三人である。 拷問を続けて、風魔の忍宿の場所を吐かせるように連絡したが、既に息絶えた後だった。 新選組の朝の鍛練が始まると、我々忍は眠りについた。
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