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それから俺がひたすら飯をかっ込んでる周りで、詳細が決められていった。
「まずは言葉だな。総司が一番口数多いお喋りだから、総司付きの用人でよかろう」
爆笑がおこり、あの斉藤一でさえ笑っていた。
「近藤さんそりゃねぇよ、俺がいなきゃこんな宴も毎回お通夜だぜ。これでも心くだいてんだからさぁ」
そう言いながらも沖田総司は楽しそうだった。
「行儀手習いは吉村君頼むよ。いろはから仕込んでくれ。」
「はっ、心得まして」
ようやく腹もくちくなり、一息いれて見回してみると、どいつも六尺近い大男揃いだ。
しかも、それぞれが一門の剣客であるのは見ただけでわかる。
普通、剛の者は群れないものだが、近藤勇と土方歳三がそれだけの人物ってことだな。
宴がお開きになり、沖田総司と吉村貫一朗に連れられて屯所に行った。
途中で、裸足はマズいってことで、下駄を買ってもらった。
これに慣れるだけでも一苦労しそうだった。
屯所はでっけえ寺の中にあったが、どうやら新選組が歓迎されてねえのが、寺の坊主共のおどおどした目付きでわかった。
着くなり沖田総司が用人に声をかけた。
「湯はわいてるか?」
「へえい」
と下働きの用人に湯殿に案内された。
「心得その一、湯の入り方、あはは」
沖田総司が楽しそうに裸になり、俺にも脱ぐように手をひらひらさせた。
沖田総司の真っ白な下帯を見ると、自分の醤油で煮しめたようなそれが、大層恥ずかしかった。
「湯に入る時も脇差しは持ってくんだぜ。天下太平ならただの儀式だけどよ、今の俺達には迫真ものだぜ」
沖田総司は脇差し、俺は長マキリを持って湯殿に入った。
俺の髪を解き、頭から湯をザブザブかけて身体をしごかれた。
「ううん、これじゃどうしようもないなあ」
「おおい!シャボン持ってこおい」
「へえい」
俺はシャボンで身体を洗われた、最初のサンカ衆になった。
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