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湯から上がり身体を拭くと、まるで皮を一枚はがれたような気がした。 真新しい下帯と着物を着せられ、部屋へ連れていかれた。 「マキリちゃん、俺の用人だから俺の部屋で寝ろよ」 他の用人達の顔色からして、それがあたりまえではないことがわかった。 「ははは、沖田先生、いたくお気に入りのようですなあ」 吉村貫一朗が笑いながら、俺の荷物を持ってついてきた。 なるほど、先生と呼べばいいのか。 また一つ覚えた。 そのことを問うと、役付きの幹部を先生、それ以外は殿で呼べば間違いないと、吉村貫一朗が物静かに言った。 沖田総司の部屋に落ち着き、また酒でもと言いかけた時に、下居の方がえらい騒ぎになって、二人の先生の後から俺もついて行った。 下居の土間には、全身に返り血を浴びた者達と、腕と足に手傷をおい戸板に乗せられた者がいた。 負傷者は浅手のようだったが、返り血の様子から相手はそうでないことがうかがえた。 「浅手だ、しっかりせんか!」 吉村貫一朗が怒鳴り、手際よく治療を始めた。 「新八ちゃん、ご苦労様でした。」 沖田総司が労ったのは永倉新八だった。 「四人、長州」 長州浪士を四人切り捨てた、という意味だろう。 言葉少なに言うと、外の井戸へ向かった。 「マキリちゃん、毎日がこんな塩梅だ。切ったり切られたり」 自分は絶対切られねえって顔で言いながら、酒の用意をしだした。 部屋に戻り酒の相手をしていたが、置いてきた自分の荷物が気になってきた。 気もそぞろにもぞもぞしてるうちに、吉村貫一朗が戻り、永倉新八も加わった。 「永倉君、これ今日から俺付きの用人になったマキリちゃん」 俺はもごもごと口の中で挨拶めいたことを言った。 「用人と差し向かいで酒か」 と永倉新八が言った。 「忍の系統、腕はたつよ」 「沖田先生が、あわや胴を取られるとこでした」 吉村貫一朗が言うと永倉新八は、ほうっと言いたげにこちらを見た。 また、飯が食いたくなった。 その旨言うと沖田総司と吉村貫一朗が大笑いしたので、ついでに荷物を取りに行ってよいか聞いてみた。 「戻ってこないと切らなきゃなんないからね」 と沖田総司が言うと 「切るほうも命懸けでござるなあ」 と吉村貫一朗が言い、なぜか永倉新八が笑った。 俺は行き、戻った。 そして今度は新選組に入った気がした。 また飯を食った。
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