3/4
前へ
/417ページ
次へ
人を切った後は、血がたぎって治まらないらしく、痛飲するのが常であった。 四人組が屯所で飲む時は、さすがに俺も同席はせずに、警護にまわった。 沖田総司は優しい奴で、このような時にも頃合をみて 「マキリちゃあん、飯だあ」 と呼んでくれるのよ。 そしたら俺は、屋根裏か屋根からトトトンと降りてくるんだけど、吉村貫一朗がすっと立って、代りに見回りに出て行くんだよ。 物静かで隙のない達人だったなあ。 斉藤一は、酒が入っても入らなくても、口数の少ない凄味のある奴だった。 沖田総司がいつも笑わせようと、苦心してたよ。 永倉新八は真面目剛直一本だったけど、剣を離れると、やる事なす事ことごとく間が抜けていて楽しい奴だった。 この四人が、よく連れ立って出かけて行くのだが、俺は屯所の警戒のために離れられず、どこに行くのか知らなかった。 島原か祇園で飲んでると思っていたのだが… この頃になると、沖田総司との表の御役目が増えてきたので、警護や探索の影の仕事のために、サンカ衆から弟分を二人呼び寄せた。 テッカリとイラナという双子の兄弟だ。 影の役目に徹してもらい、存在は隠しておいた。 京の忍社会にも異変が起きていた。 修験道者を源とする、風魔忍が京に現れた。 爆雷を使った破壊や暗殺を得意とする集団であるため、獲物によっては警護側のサンカ衆と刃を交えることとなりそうだった。 京の全サンカ衆に、風魔忍の根城と雇い主の探索を呼び掛けておいたが、次々と入ってくる情報は、新選組と雇い主の京都守護職、会津藩主松平容保様を差していた。 えらい事に巻き込まれてしまった。 俺とイラナにテッカリの三人では、とても守りきれない!
/417ページ

最初のコメントを投稿しよう!

563人が本棚に入れています
本棚に追加