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そんなある日、探索から帰ると、沖田総司の部屋ではいつもの四人組が酒を酌み交わしていた。
早速、気配を読まれた。
「マキリちゃん、おかえり、降りてきなよ」
沖田総司が斉藤一を蹴飛ばした。
「一ちゃん、場所あけてよ」
斉藤一は苦笑しつつも脇につめた。
「なんだか最近、屋根裏が賑やかななんだけどなぁ」
沖田総司が俺を横目で見ながら言った。
彼等に気付かれずにおれるわけはないので、テッカリとイラナのことを話し、風魔忍への懸念も話した。
すると、沖田総司はポンと膝をたたいて部屋から出ていった。
戻るや、俺に切り餅を四つを放り
「軍資金ムシってきたよ。歳さんが忍の事は忍に任せるってよ。」
「ひゃ、百両とは剛義ですなあ」
吉村貫一朗の声がうわずってた。
「それをどう使うかで器がためされるぜ」
斉藤一が言うと永倉もうなずいた。
「風魔忍全員を賞金首にいたします。サンカ衆総掛りで地獄の果てまで追われますよ」
全員がうなった。
「サンカ衆にはマキリちゃんより強い奴がいくらでもいるんだろ?マキリちゃんが味方でよかったよ」
沖田総司が何度もうなずいていた。
「一首五両もだせば、狩りが始まると思います」
「安い首だねえ、やだやだ」
「では、さっそく手配をしてまいります」
そう言って、長押にとりつき天井裏に出た。
テッカリにうなずくと、瓦を上げて外に出て行った。
俺が座に戻ると
「はえぇなあ、もう手配したのかよ、まあ飲め」
沖田総司の酌を受けると、屋根で狼の遠吠えが聞こえた。
「始まりました」
と言って上を指差した。
遠吠えはだんだんと遠くなっていき、聞こえなくなった。
皆、説明して欲しげな顔をしていた。
「一吠え五里で、山へ山へと繋いでいきます」
杯を干した。
「戦国の頃に、奥羽から京まで届いたとの言い伝えがあります」
皆の顔に驚きが走った。
「さあて、飯にしますか皆さん」
「なんかよお、お前がきてから食ってばかりなんだけど、俺」
「聞いて聞いて一ちゃん。今日の昼なんかさ、団子で酒だぜ。それからなあ………」
こんな平穏な日もけっこうあってね、楽しかったなあ。
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