プロローグ

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クリスマスってさ、俺にとっちゃ普通の日と何ら変わらないんだよね。 だって俺もう高校2年生だから、いつまでもガキみたいに「クリスマスプレゼントだ、わーい」みたいに喜べる年齢じゃないし、それにケーキとかシュークリームとか俺嫌いなんだよ。 甘過ぎて食えたもんじゃねぇからさ。 聖夜だかなんだか知らないけど、勝手に祭り上げられても困るんだよね。 なんなんだよ、あの街一色に広がるクリスマスイルミネーションは。 こっちは乗り気じゃないってのに、ピカピカ目障りなんだよ。 どうせ次の日役割を終えたら片付けられるくせにさ。 全く…… 「…………」 まあ、なんてグチグチ言った割に昔は結構楽しんでたっけ…… 昔っつても小学生の頃だけど。 あの頃は、甘い物もそんなに嫌いじゃなかったし、街の光景も綺麗だと思ってたし、何よりクリスマスプレゼントが朝枕元に置いてあった時には、天地がひっくり返る程嬉しかったもんな。 興奮の余り、サンタが俺んちに来たんだって友達に言い回る始末でさ。 でも、その友達の一人が、「サンタっていないんだよ」とか言いやがったんだっけ。 そうそう、そういやあの時からだ。 あの時から急にクリスマスが白け出したんだ。そいつの心ない夢をぶち壊す一言……いや、真実なわけだけど、それでも幼いながらに思ったんだよな。 『ああ、全部作りもんの楽しさなんだって』 そう認識すりゃ早い早い。 クリスマスに対しての空虚感はハイスピードで拡散して行き、俺の中で年間の一つの行事は見事なまでに消失した――というわけさ。
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