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『…ごめん、な』
俺は優しく和洋を抱きしめ、呟くかのように囁く。
和洋の手は、俺の背中にしがみつくように抱き着いてきて。
…何と無く、手が震えている事が解った。
『忘れたく、ねぇよ…ッ…』
「…俺は、どんな風になっても和洋が好きだよ」
『好き、なのに…こんなに…ッ、愛してるのに…!』
優しく和洋の頭を撫でながら、空に光る月に目を移す。
気付かなかったけど、今日は嫌な程の綺麗な満月だった。
――満月に照らされながら、俺達は抱きしめあった。
和洋の温もりが、肌に直接伝わる。
俺の肩に、涙の生温い感触。
…俺も、和洋と離れたくねぇよ。
このまま、時が止まってほしい。
――気が付くと、俺の目からも涙が零れていた。
俺は拭う事さえしなかった。
一瞬でもこの体を離せば、消えてしまいそうで。
「…愛してる」
そう囁いた言葉は、通りすぎたバイクの音と共に、駆け抜けていった―…。
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