小夜編之一

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「近いな。警戒しなければ…。」 小夜は腰に帯びた愛刀[朱雛菊(あけのひなぎく)]の柄を右手で握りなおした。 今回の任務は一筋縄ではいかない。小夜はそんな予感がしていた。 殺気 と、同時にクナイが数本小夜の足元に突き刺さった。 間一髪、小夜は刹那でそれをかわし、二、三歩後退し抜刀した。 (…気配が消えた。出来る…。) 小夜は警戒を強める。その瞬間。 「フフフ…。私の気配を感じ取れないなんてまだまだ修業不足ね、公儀隠密(かいいぬ)さん。」 闇の中から女の声が聞こえた。探るが特定出来ない。 「出てきなさい、野良猫。貴女とじゃれあってる時間は無いの。」 小夜は警戒したまま殺気を放つ。しかし。 「あら、野良猫だなんて酷い言い方ね。」 クスクスと笑う声。女は続ける。 「大丈夫よ、時間など気にする必要はないわ。何故なら貴女は此処で死ぬんですもの。」 突如、小夜の周りを殺気が取り囲む。 死角はない。 そしてそれらは一斉に小夜へ襲いかかった。
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