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「近いな。警戒しなければ…。」
小夜は腰に帯びた愛刀[朱雛菊(あけのひなぎく)]の柄を右手で握りなおした。
今回の任務は一筋縄ではいかない。小夜はそんな予感がしていた。
殺気
と、同時にクナイが数本小夜の足元に突き刺さった。
間一髪、小夜は刹那でそれをかわし、二、三歩後退し抜刀した。
(…気配が消えた。出来る…。)
小夜は警戒を強める。その瞬間。
「フフフ…。私の気配を感じ取れないなんてまだまだ修業不足ね、公儀隠密(かいいぬ)さん。」
闇の中から女の声が聞こえた。探るが特定出来ない。
「出てきなさい、野良猫。貴女とじゃれあってる時間は無いの。」
小夜は警戒したまま殺気を放つ。しかし。
「あら、野良猫だなんて酷い言い方ね。」
クスクスと笑う声。女は続ける。
「大丈夫よ、時間など気にする必要はないわ。何故なら貴女は此処で死ぬんですもの。」
突如、小夜の周りを殺気が取り囲む。
死角はない。
そしてそれらは一斉に小夜へ襲いかかった。
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