神様がくれた一日

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 本気だと思えば語られる言葉全てが本気に聞こえるし、冗談だと思って聞けば、全部が冗談にも思えてくる。 「? どうした。疲れたなら休んでろ」  何処か投げやりにも聞こえたその言葉に、ラルフが表情を険しくさせた。その表情の変化に、まずったと思ったのが軍曹殿。  尤も、既に発した言葉は取り消しが効かないので、今更どうする事も出来ないが、この後対応をミスると、着任当初のラルフに戻る事も充分に考えられる。それだけは何としても避けたい。  で、実はこの”何としても”ってのがくせ者で、現場指揮官以上・以外の感情が思いっ切り割り込んでいて、それを否定し見ない振り・気付かない振りをするのが、もはや出来なくなっていた。 「それ、貰います」 「んっ? ああ。悪いな」  少し前、自分が軍曹の為にと運んで来たものを貰い、視線を落とす。そして、首を傾げて上官を見詰めた。 「軍曹の右目、本当は見えているでしょう」 「見えてないよ」 「嘘だ」 「どうして嘘だと思う。?」  ツッと伸ばされたラルフの左手指が、眼帯の上をそろりと撫でた、何度も何度も繰り返して…。 「軍曹の右目は、ちゃんと見えているんだ。だから、話をすり替える。いつもいつも…他の話にして誤魔化す」  独り言のような小さな呟き。  ぼんやりと空を漂っていたラルフの瞳が、自分の左手をしっかりと視界に捕らえた。そして、慌てて手を引っ込める。 「すっ・済みませんっ」  酷く狼狽し、謝ったと同時に勢い良く立ち上がったラルフ越しに、とても良く知った声が届いた。彼はコーヒー屋の出前持ち。 「ヘイ、お待ち」  まずは軍曹に。それから、困惑の表情を表しているラルフにもコーヒーを押し付けた。 「ん。お前の」 「あっ・・・。どっ・どうも・・・」  困惑の原因は、敢えて尋ねない。直接的には力になってやれないだろうから…。だから、気付かぬ振りをして軍曹に目を向けた。 「さっさと寝ちまって下さいよ、大将。目障りこの上ないんスけど」 「俺は”軍曹”だが」 「も、同じっス。緊急ミーティングやるんで、とっとと消えて下さい。あ、お前もな。時間になったら優しく叩き起こしてやるから、それまでの内に身体をしっかりと休めておけ」
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