神様がくれた一日

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 人間って暖かい。熱い血潮が全身を駆け巡っているから…。  必死にしがみついた温もり。  重なった鼓動に驚き、身を裂く痛みに涙を零し、でも、つかみ取った温もりだけは手放さず、深い眠りへと就いた。 「ジョークじゃ効かなくなるぞ? おい? 眠り姫?」  張り付いたままで安らかな寝息を立てるラルフを抱き締めて、補給可能なハニーちゃんを一本。  仮眠で済ませたグレンは、ラルフを起こさないようにして、ラルフの代わりで見張りに立った。が、なくなった温もりに驚いて直後にラルフが目覚め、そして、跳ね起きたと同時に身体を突き抜けた痛みに、自分が生きている事を実感した。 (痛い…、身体の奥が。俺、生きてるんだ。痛いんだから)  馴染みのない痛みに四苦八苦しながら起き出し、自分の隣りから突如として消えた温もりを今一度捕まえる為に駆けて行った。 「軍曹っ!」  黙って姿を消した温もりに一声掛けて、他に目がないのを確認の上で抱き着く。直後に交わされた熱が、確かにいきていると雄弁に語り掛けてくれた。生き残る為の道標を、やっと見付けた…。 「寝てりゃあ良いのに。身体、辛くないのか」 「辛いですよ。俺、生きてるから。痛み、ちゃんと感じてる」 「ふ…ん」  一息吐いて見上げたら、軍そうの左目とバッチリ視線が合って、その直後にくしゃりと頭を撫でられた。それが、酷く嬉しかった。         END
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