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思想・宗教の違いこそあれ、それでも同じ人間のやっている事だ。365日24時間フルタイムで緊張を持続させられる訳がなく、だからたまに、こういうのんびりした日がポッコリと現れたりする。
何が原因で出現するものであるのか、最前線に投入される、いわゆる消耗品にも等しい彼等には全体を把握する事自体が不可能だから探りようもなかったが、こういう日はジョークが飛び交い、笑いも巻き起こった。
一瞬だけ、今の自分が置かれている境遇を忘れ、でも直ぐに、否応なしに血生臭い現実を思い出し、だから、今日もまだ人間らしさを持って居られたと、神に感謝する事が出来た。
絶対に生き残って国に帰るんだ、との想いも自然と強くなる。
多分、対面すれば生きるか死ぬかの敵同士になってしまう相手も、ここら辺りの感情の動きは同じだろう。
尤も、何処の神様に連中が祈るのか預かり知らぬ事だが、何事にも息抜きは必要だ。
こちとら、血も涙も持ち合わせている立派な人間である。寧ろ、上等に部類する人間様だ。安全圏で指示だけを出し、銃弾の飛び交う場所に身を置かないお偉方はすっかり忘れてたいるようだが…。
昨日までの、否、ほんの数時間前までのピリピリした緊張が、いきなり消滅した。
神様がくれるそれはいつも突然で、気付くまでに少しの時間が必要とされる。神の贈り物なのか、敵の作戦なのか、その判断が中々微妙で難しいのだ。で、今回のこの静けさは、どうやら神様からの贈り物であるらしい・と確信。
切れそうなほどに張り詰めている五感に、全く人の気配を感じなかった。無論、さっきも感じられない。それでも、もう暫くは警戒して辺りをキョロキョロ。
眼前に広がる廃屋から人間の生活臭を感じる事もなく、何かが仕掛けられている痕跡も見付けられず、諸々の確認事項がオールクリアーされた途端、廃屋がテーマパークに変身した。
美味い酒も良い女もどうでも良かった。そりゃ、ないに越した事はないが、何よりも優先されるのは、身体を横にしてグースカ寝てやれる半日だ。苦楽を共にしている戦友とのおふざけも大切な事。
神は我々の行動をちゃ~んと見守っていて下さる。
顔と顔を見合わせ、小さくガッツポーズ。
気を緩めてはしゃぎ過ぎると最悪命を落とす事になったが、程々で留めておけば、これ以上にない最高の贈り物だ。
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