神様がくれた一日

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 一時期と比べれば大分慣れてきたが、それでもまだ、何処かに遠慮を残していた。だからきっと、追い出されたのだろう。  但し、”邪魔だから”追い出したのではなく、”そのままじゃ気の毒だから”の給士。  その辺の事は、グレンにも解っている。  多分きっと、ラルフ本人にも解っている事だ。  全員が先輩になるが、意地悪したり言ったりする先輩は一人もなく、その反対に気を配ってくれる先輩達だから、今もって馴染めずにいる自分が腹立たしく、けれど、その想いが余計な距離を作る原因になっていた。が、その事にラルフは気付けないでいる。けれど、気付いている先輩諸氏は、ラルフをわざと給士に使っていた。  目下のところ、新入りが肩の力を抜く事が出来るのは軍曹の側だけらしいので、何だかんだと理由を付け、作戦行動時も可能な限り軍曹の側に居られるようにと、皆して協力しあっている。  張り詰めた糸ほど切れ易いものはない。  思うところは軍曹と同じ。一人の欠員もなく国に帰る事。  だから、これが初めての事ではなかった。  愛しのハニーちゃんと愛を語らっている軍曹殿に食事を運ぶのは、新入りの役目である、折角の息抜きのチャンスだというのに、このまま緊張させていては何の意味もないから…。  当然、ラルフに拒否権はない。先輩だがそれと同時に上官でもある人物からの命令なので、彼は速やかなる実行に移っている。  尚、 『新入りの役目だ』と有無も言わせず押し付けた事だが、もう一つおまけで、 『怒鳴られないのが新入りのお前だけなんだ』とも付け加えてやって、頭ごなしに強制しているラルフ専任特別任務。  実際、完全に打ち解けていないラルフに対し、息抜き時間中に軍曹がジョークででも怒鳴り付ける事はなく、それを見て、俺達の軍曹はやっぱり凄いと、何の打ち合わせもしていないのに俺達のやっている事を解ってくれているよと安心し、感謝感激雨霰で、尊敬の念が更なる団結力へと繋がっていた。  因みに、自分に関する事に対してはいきなり無頓着になるグレンには、連中が自分に向けている尊敬とか敬愛とかいったモンは丸で伝わっていない。その鈍さも彼の魅力の一つでもあったが、 『皆で国に帰るぞー!』と士気が高まり、日一日と結束力が強まっている事は判っている。
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