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電車の車内から今日も夜空に輝く星を見つめる…。
意思の強そうな目と不機嫌そうにいつも閉じられた口、髪は短くウルフカットにしている長身のその人間は、温もりに飢えた狂人…。
その瞳には何も写りはしない。
ただ憎そうに明日を見つめているだけ…。
夜のネオンが輝く中、いつものように帰路に着いていた。
日付が変わろうとしている最終電車は静かに走る。ほんの少しのアルコールと汗の匂いを漂わせて。
終点を告げる車内アナウンス。
その声が疲れを労ってくれているようで好きだった。
「あのすみません、これ落としましたよ。中村…、かたよく、さん?」
「珍しい名前でしょう?『片翼』と書いてそのまま『つばさ』と読むの。それじゃ、ありがとうございました」
にこやかに笑って去る。
カタヨク―…‥
それは私のもう一つの姿。
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