a.少年

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意識が途絶え始めたとき、遠くから低く落ち着いた声が聞こえたのを耳にした。 内容は分からない。 が、徐々にこちらへと近づいているようだった。 ゴミ収集車が来たのかと考えては見たが、ゴミが砕け散る音も無ければ、ゴミ収集車特有のあのメロディが聞こえてこない。 朝早くにゴミ分別をしているおばさん、と言う考えもあったが、今は深夜で、しかもこの周辺で男がゴミ分別をしているなんて聞いたことも見たことも無かった。 深夜な上、此処が人通りが少ない路地だとすると、たまたまビールを買いに夜道を歩いていたおっさんと言うカテゴリーが一番当てはまるかもしれない。 又は友人を連れた酔っ払いに一票だ。 だがその期待は全て外れ、近づいた声と足音は、オレの入ったゴミ袋あたりでピタリと止んだ。 オレをどうする気だ、と考えていると、もう一人の声が高めの男が、「あっ、やっぱり動いてるって!このゴミ袋!」と指を差しながら(多分)言っているのが聞こえた。 この発言に、僕は戸惑う。 やっと安息を手に入れられそうなのに、此処で又地獄へと戻されるのはごめんだった。
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