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〆今日、翠が学校を休んだ
明日から入院だから
水の顔が見たかったな。
〆今日、翠の夢を見た。
二人で行った動物園楽しかったなぁ。
日記は翠でいっぱいだった。
そして最後のページは
翠に宛てられた手紙のような文章になっていた。
〆ごめんね、翠。
そして会いたい。
今も大好きよ?
もう日記を書く力さえなくて私の時間が
迫ってる事に気づいたの。
お母さんは笑っていたけど目は赤かった。
翠がこの先誰かを好きになるのを見なくてすむ私は・・・幸せかな。
翠とのたくさんの思い出残せた私は
幸せだったよ。
最後にやっぱり顔がみたいなぁ・・・。
振ったのは私なのに都合いいこと言ってるね私。
だけど私は翠が好きだよ。
死んじゃうけど翠がずっと好き。
傷つけてごめんね。
弱い私でごめんね。
振ったのは私でも
今も大好き。
そこで日記は終わっていた。
「この子、私に弱音は言わなかったの」
ひなの母が独り言のようにつぶやく。
「この日記も隠すように置いてあったわ」
「・・・・・」
「雛は本当は日記を見られたくないのかもしれない。
だけど雛はあなたを裏切ったことはなかった。そのことを知ってほしかったの。」
翠は唇をかみ
手は拳を握っていた。
必死に涙をこらえるように・・・。
雛の家からの帰り道。
翠はつぶやくように言った。
「あほだよあいつ」
泣きそうな声。
「俺に会いたいなら言えよ!俺だって・・・。」
翠は雛が入院していることを知らなかった。
雛の意思で担任は
『家の都合』とだけ私たちに伝えていた。
「・・・翠」
「気がついてやれれば、そばにいてやれたのに・・・。
雛が浮気なんかしないこと、なんですぐ俺わからなかったんだ・・・」
「・・・翠」
「傷ついたのは俺じゃなくて
あいつだ。雛につらい役目させた・・・・雛・・・」
翠の顔は雨に濡れての涙なのか
雨なのか
わからないくらいぐちゃぐちゃになっていた。
「・・・・。」
自分をせめる翠に言葉が見つからない。
翠のこんな姿を14年間一回でも見ただろうか。
子供のようにはしゃぐ翠しか私は知らない。
翠にとって雛は一番の人。
雛が死んだ今となっては
雛に勝てる人はだれもいなくなった。
雛ずるいよ。
勝ち逃げなんて。
ぼたぼたと私は
翠の姿を見ながら泣いた。
雛が死んだショックと
翠の雛への想いの深さ両方に
私は涙が止まらなかった。
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