第一章→出会い

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ほんの一瞬だった。 大きな車が自転車に乗っていた少年と、正面から衝突した。 辺りは一面、血に覆われていた。 分かるのはこれが悲惨な事故だという事だけだった。 「だ、い、じょぶ?」 綾音はその現場に恐れる事無く入りこみ、少年にそっと近づいた。 返事はない。 少年の体からは大量の血が流れていた。 「おっ俺のせいじゃねぇ!そいつが飛び出してきたんだ。」 大きな車に乗っていた運転手が、駆けつけた警察官に何かを訴えている。 「目撃者かい?それとも知り合いかい?」 綾音に警察官の一人が話しかけてきた。 「あ~あ、わし…み、み、きけ、ない。」 綾音は一生懸命喋った。 警察官も綾音の耳が不自由な事が分かったのか、ポケットから紙とペンを取り出した。 警察官は紙に一言書くと、綾音に渡した。 この子と知り合いなのかな? 綾音は首をふる。 私は事故の目撃者です。 紙に書き、警察官に見せた。 警察官はコクリと頷き、また何かを書き始めた。 話が聞きたいから、一緒に来てくれるかな? 綾音はコクリと頷いた。 これが綾音と少年の初めての出会いだった。
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