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ほんの一瞬だった。
大きな車が自転車に乗っていた少年と、正面から衝突した。
辺りは一面、血に覆われていた。
分かるのはこれが悲惨な事故だという事だけだった。
「だ、い、じょぶ?」
綾音はその現場に恐れる事無く入りこみ、少年にそっと近づいた。
返事はない。
少年の体からは大量の血が流れていた。
「おっ俺のせいじゃねぇ!そいつが飛び出してきたんだ。」
大きな車に乗っていた運転手が、駆けつけた警察官に何かを訴えている。
「目撃者かい?それとも知り合いかい?」
綾音に警察官の一人が話しかけてきた。
「あ~あ、わし…み、み、きけ、ない。」
綾音は一生懸命喋った。
警察官も綾音の耳が不自由な事が分かったのか、ポケットから紙とペンを取り出した。
警察官は紙に一言書くと、綾音に渡した。
この子と知り合いなのかな?
綾音は首をふる。
私は事故の目撃者です。
紙に書き、警察官に見せた。
警察官はコクリと頷き、また何かを書き始めた。
話が聞きたいから、一緒に来てくれるかな?
綾音はコクリと頷いた。
これが綾音と少年の初めての出会いだった。
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