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「損?そういうのって損得で動くもんじゃないだろ?
それに、俺が損して誰かが助かるならそれで良いんだよ」
「ふぅ~ん…やっぱりあんたはお人好しね」
由真がそう言ったのを合図にしたように、機内にシートベルト着用サインが出された。
二人は素直にシートベルトを閉めると、数分後には機体は動き出した。
「ねぇ…突然だけど、あんたがもし自分か仲間かどちらかしか生き残れないような状況に立たされたら…あんたならどうする?」
「本当に突然だな…」
「いいから…どうする?」
軽く言い返した空だったが、由真の目は真剣だった。
「そうだな…まず両方生き残れる方法を探すよ。
それでもしダメなら……仲間を助ける…かな?」
「やっぱりね…」
答えを聞いた由真はどこか悲しげに見えた。
「でも、その状況になったら必ずその行動をとれるかは分かんないよ。
一番良いのは、そんな状況を作らないことだって」
「そうね…」
笑顔でそう言った空を見て、由真は余計に不安になってしまった。
(強くならなきゃ…。私が足を引っ張ったら…空はたぶん…)
由真が改めて自分の決意を確認したところで、機体に激しい重力感が加わり、飛行機はオアフ島から離陸していった。
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