第十二章 救援

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空と由真を乗せた飛行機は今アジア上空を飛んでいた。 各国の領空を問題なく通過できるのは、ノアの飛行機だからである。 国の上層部のごく一部の人間はノアの必要性を理解できている。 またノアは非常時の行動ならば大抵のことは黙認されるという利点もあり、飛行機は最短距離で目的地に向かうことができた。 だが、その行為は簡単にできることではなく、当然他国に迷惑をかけることになる。 飛行機の離陸時間を遅らせたり、進路を変えたりと多大な混乱を招いてしまう。 だが、そんな大混乱などまったく知ることのないたった二人の乗客は、何気ない話を延々と繰り返していた。 「根元も橋本も言ってたんだけどさ…由真ってモテるらしいんだよ」 「あのね…コメントに困ること言わないでくれない?」 先ほどから空と由真は普通の高校生が話すような会話をしていた。 ノアのことを極力出さないのは、紗希やルー、リムの心配を少しでも和らげるための二人なりの配慮だった。 二人とも何も言わずにそう思っていたので、自然と話題は明るいものに変わっていたが、決して無理をしているわけではなかった。 一応三人の無事は確認しているわけで、漆黒の空にいた時よりは気が楽だったのが理由である。
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