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「あれ…おかしいな…目の前がチカチカしてきた…」
声が聞こえた。
今にも消え入りそうな静かな声が。
草木も見当たらない荒野で、長髪の赤髪の少女が、金髪の少年の腕に抱かれながら力なく呟く。
少女は体中傷だらけで、左肩から右の腰にかけてひどい裂傷があった。
「くそっ…何で…何でこんなことに!!」
少年は必死に少女に青く光る暖かい光を傷口に向けて放っているが、傷口は変化する気配がなかった。
「もういいよ…。誰も悪くない…私が弱かっただけ…だから…泣かないでよ…」
少女は弱々しく少年の頬に手を当て、そっと微笑んだ。
少年の瞳から流れている涙が、頬を伝い、少女の手の甲を流れる。
「あなたが泣くと…私まで…悲しくなるわ…。
大丈夫よ…ちょっと眠るだけだから…」
「眠っちゃダメだっ!!今…今助けるから!!」
少年は自らの力の許す限りに傷口の回復のための光を放つが、やはり結果は変わらない。
「…この傷だって…すぐに…治るわよ…。それに…あなたが側にいてくれてる…だから…何も怖くない…」
少女の手が少年の頬から離れた。
荒くなってくる呼吸は、泣いている少年の悲しみをさらに増幅させる要因になった。
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