第十二章 救援

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「ルーシア!!僕はまだ君に何もしてあげていない! これから二人で…たくさん思い出を…」 「…そうだと良いわね…。 私…バカだったな…。ずっとあなたのことを見てきたのに…自分の気持ちに気がつくのが…遅すぎた…」 少女の声が小さくなってくる。 少年は少女の手を握りしめながら必死に呼びかけるが、頭では最悪の結果しか想像ができなかった。 「ねぇ…レイン…。私…あなたに近付けてたかな…? ちゃんと…あなたの支えになれてたかな…?」 少女の声は既に途切れ途切れになっていてよく聞こえなかった。 それでも少年はパズルを繋ぎ合わせるように言葉を耳に納めていく。 「レイン…私…もう無理…眠くて仕方がないの…。 だから…最後に約束…」 「最後なんかじゃ…!!」 「…誰も恨まないで…。 あの子は悪くないの…。 そして…私のことは忘れて…?」 少女は青白くなった顔で精一杯の笑顔を作った。 「ルーシア!!」 「レイン…大好きだよ…」 少女の瞳が閉じ、荒かった呼吸が静かになり、やがて止まった。 荒野に吹き荒れる柔らかい風の音だけが、少年の耳に残った。 それは遠い日の記憶 それは遠い日の夢 それは遠い日の過ち
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