第十二章 救援

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ふと隣を見ると、由真が静かに寝息をたてて眠っていた。 大抵は笑顔か真剣な顔をしている由真の始めてみる無防備な表情に、空は思わず呼吸を忘れるほどに見入ってしまっていた。 長いまつげに、すっと伸びた鼻先。整った輪郭に赤く色づいた唇。 今までまじまじと由真の顔を見つめたことはなかったが、根元や橋本が言うように人気が出るというのも頷けるようだった。 (……可愛いな…) 空は無意識のうちにそう心の中で呟き、すぐに恥ずかしさで由真から顔を反らした。 空の頬は赤く染まり、せっかく引いた汗も再び吹き出しそうだった。 それからさらに数十分後、夢を見てからどうも寝付けなくなってしまった空は、何もすることがなくただ呆然と由真の隣に座っていた。 由真を起こそうかと思ったが、これほど気持ちよさそうに寝られるとかえって起こすのが忍びなくなってしまい、結局一人で何もせずにいた。 「うぅ~ん…」 いい加減空が退屈に耐えられなくなったあたりで、隣からうめき声が聞こえた。 その声に少し驚いた空が隣を見ると、由真が欠伸をして手を上に上げて体を伸ばしていた。
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