第十二章 救援

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「被害を最小限に抑えるために数人を犠牲にする道が正しいのか、諦めないで戦って、全員生き残るか全員死ぬかのどちらかへの道が正しいのかは誰にも分からないわ。 そこからはもう哲学的な話になってくるから…。 どちらにもメリットとデメリットはあるもの… それで?あんたはどうしたいの?」 空は黙ってしまった。 それも当然である。簡単に答えが出せたら、その人はただの偽善者だ。 だが、空は違った。 だからこそ悩んでいた。 どう転んでも誰かは傷つく。今この瞬間だって見えない場所で誰かが傷ついているかもしれない。 意識しなければ気になどならなかったことが、ホノルルでの一件で目を反らしてはいけないことへと変わってしまっていた。 「まっ…沈黙がこの場合の正解ね。今の私の話を聞いてもまだ諦めないで戦うなんて言ってたらあんたを軽蔑してたかもしれない…」 由真は安心したようにそう言うと、空の頬を両手で掴んで自分の方を向かせた。 「由真…?」 「それは簡単に答えを出しちゃダメ。それは私たちが戦い続けていく中で常につきまとってくる問題だから。 あんたは今すごく辛いかもしれないけど…それを乗り切らないで。ずっと背負っていきなさい? それが、生殺与奪の権利を知らずに与えられた私たちの責任なんだから」 由真は空から手を離すと、優しい微笑みを空に向けた。
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