一編①

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「ちょっと男子! 紗耶香ちゃんが、怖がってるじゃない!!!」 「そーよ、そーよ!」 「勝手にファンクラブなんか、作るな!!!」  女子による攻撃が始まる。 「なにを! 我々は、ただ紗耶香ちゃんを守りたいだけだ」 「そうだ、他の女は引っ込んでろ!!!」  負けじと男子が応戦する。  男子vs女子となり、クラスが2つに分かれた。 「みんな元気で、いいわねぇ~」  既に定年のはずのお婆ちゃん先生は、笑顔でその様子を見守っている。 「山下一です。よろしく……」  そんな中、一は自己紹介する。  クラスメイト達は、教室の中で右と左に分かれ、睨みあっていた。  紗耶香だけが、キョトンとした顔でそれを見ている。  いつの間にか、お婆ちゃんは眠っていた。 「……いや、もういいです……」  一は席に戻った。 「いいんだ……いつものことなんだ……」  そして机に伏せて、うるさい喧騒を耳にしながら沈んでいた。 「あっ、あの。よろしくね」  びっくりして顔を上げると、前の席の紗耶香がこちらを向いていた。 「こっ、こちっ、こちらこそ、よっよろしく」 「……ふふっ」  上擦った声で答える一と、微笑む紗耶香。 「え?」 「あっ、いや……山下君、変な顔になってるよ?」 「あっ、ええっ!!! あっと、その……」  必死にあれこれ顔をいじる一。
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