一編①

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「あっ、……あはははっ!」  紗耶香は遂に声に出して笑い始めた。  一はただただオロオロするばかりだった。 「あっ、ごめんなさい。えーと、あなたの名前は?」 「……山下一です」  さっき誰も聞いていなかった事を改めて認識し、へこむ一。 「山下君。私、山崎紗耶香。改めてよろしくね」  すると紗耶香は微笑みながら、なんと握手の手を差し出してきた。 「はっ、ハイ」  ドキドキしながらも、その手を取ろうとした時……、  キーンコーンカーンコーン 「ハイ、皆さん。HRは終わりです。次は数学なので、用意してください」  チャイムとお婆ちゃんの一言で、強制終了。  握手をする前に、紗耶香は前を向いてしまった。 「あっ、あの……」  一は改めて声をかけようと手を伸ばす。 「紗耶香ちゃ~ん。遥先生呼んでるよ~」 「はーい」  行ってしまった。 「ハァ……もう少しだったんだけどなあ……ん?」  一はため息をつくと同時に、あのファンクラブに囲まれている事に気付いた。 「「「貴様ー!!! 未遂とはいえ、紗耶香ちゃんと握手したなあー!!!」」」 「え!? いや、それは……」 「「「問答無用!!! おおりゃーーー!!!!!!」」」 「うっ、うわーーーー!!!」  こうして、一の生活が始まる。
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