91人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっ、……あはははっ!」
紗耶香は遂に声に出して笑い始めた。
一はただただオロオロするばかりだった。
「あっ、ごめんなさい。えーと、あなたの名前は?」
「……山下一です」
さっき誰も聞いていなかった事を改めて認識し、へこむ一。
「山下君。私、山崎紗耶香。改めてよろしくね」
すると紗耶香は微笑みながら、なんと握手の手を差し出してきた。
「はっ、ハイ」
ドキドキしながらも、その手を取ろうとした時……、
キーンコーンカーンコーン
「ハイ、皆さん。HRは終わりです。次は数学なので、用意してください」
チャイムとお婆ちゃんの一言で、強制終了。
握手をする前に、紗耶香は前を向いてしまった。
「あっ、あの……」
一は改めて声をかけようと手を伸ばす。
「紗耶香ちゃ~ん。遥先生呼んでるよ~」
「はーい」
行ってしまった。
「ハァ……もう少しだったんだけどなあ……ん?」
一はため息をつくと同時に、あのファンクラブに囲まれている事に気付いた。
「「「貴様ー!!! 未遂とはいえ、紗耶香ちゃんと握手したなあー!!!」」」
「え!? いや、それは……」
「「「問答無用!!! おおりゃーーー!!!!!!」」」
「うっ、うわーーーー!!!」
こうして、一の生活が始まる。
最初のコメントを投稿しよう!