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「ったく、アイツら……」
軽く肩で息をしている翔。
あの後、結局誰一人として捕まえれず、流れ解散の形になった。
「いかんいかん。気をとり直してっと。新学期はスタートが大事だからな」
翔は両手で頬を叩いた。
そして、新しいクラスの前まで歩き、ドアを開けた。
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「おい、翔。やっぱ、中村さんっていいよな?」
前の席で、去年クラスが一緒だった奴が話しかけてくる。
鞄の荷物を整理していた翔は、顔を上げた。
そして、斜め前の席で他の女子と談笑している、中村律子(ナカムラリツコ)を目に入れる。
どことなく大人びていて、常に微笑をうかべ、スタイルもよく、男女問わずに人気がある。
付き合った男は数しれず、去年のミスコンで2位に輝いたお人だ、と前の席男が喋っていた。
「……そうか? 俺はああいう軽そうなのは苦手だ」
「相変わらずかたいねぇ。だから、彼女できんのやぞ」
「大きなお世話だ!」
しっし、と前の席男を追い払い、翔は机に顔を伏せた。
(あんなん俺にしてみれば、ストライクどころかボークだっつーの)
翔は目を閉じた。
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